【全文】木村花さん出演「テラスハウス」検証報告、フジテレビが報告

【全文】木村花さん出演「テラスハウス」検証報告、フジテレビが報告

6

フジテレビは7月31日、5月に死去した木村花さんが出演していた恋愛リアリティショー「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」の検証報告を発表しました。一部で報じられた「やらせ」については否定。今後は「SNSへの対応-誹謗中傷は絶対に許さないという強い姿勢」「出演者へのケア-幾重にも重なるケアの実現」を基本方針として対策を講じていくとしています。いつか公式サイトから削除されると思うので記録のため、以下に全文を保存しておきます。

「TERRACEHOUSETOKYO2019-2020」検証報告

この度、「TERRACEHOUSETOKYO2019-2020」に出演されていた、木村花さんがご逝去された事について、改めてお悔やみ申し上げます。
またご遺族の方々にも深く哀悼の意を表します。

本資料は、「TERRACEHOUSETOKYO2019-2020」の出演者である木村花さんが亡くなられたことを受け、本番組の制作過程、及び制作業務に関連する対応について行った検証報告です。検証は、本番組の制作過程において不適切な行為がなかったか、制作側が出演者のSNSの状況についてどのように認識し、どのように対応したのか、出演者に対するケアはどのようになされていたかについて、事実関係を明らかにするとともに、今後の番組制作において取り組むべき事項を確認することを目的としました。

但し、検証内容のうち、出演者及びその他関係者の個人の発言等については、本検証報告において最低限必要であると判断したもの以外については言及しておりません。また出演者及びその他関係者の個人のプライバシー情報、及びセンシティブ情報等については、記載しておりません。

1.番組概要・経緯

「TERRACEHOUSETOKYO2019-2020」は、募集によって選ばれた初対面の男女6人がシェアハウスで共同生活する様子を映し、それに対しスタジオのタレントたちがコメントをするスタイルの番組です。フジテレビと株式会社イースト・エンタテインメント(以下イースト)の共同著作番組で、2019年5月からNetflixで配信され、同年6月からFODで配信、7月から地上波で放送しました。2020年5月23日に、本番組に第20話(2019年10月配信、12月放送)から出演していた木村花さんが亡くなったことが明らかになりました。これを受け、フジテレビは、5月26日に放送予定だった39話の放送を取りやめ、5月27日に今後の放送、FODでの配信、新たなエピソードの収録を中止することを決定し、発表しました。

2.検証方法について

検証にあたっては、社内関係部門を横断するメンバーを選任して担当させました。
検証では、木村花さんが出演した本番組の38話の制作、配信、放送に関わる経緯を中心に、関係者の聞き取りを行い、関連する記録、資料等の確認を行いました。
また、本番組の出演者ならびにその所属事務所の関係者への聞き取りも行いました。

更に、有識者として、検証過程には弁護士にも参加して頂き、検証方針の設定、検証項目、検証方法の確認を行うとともに、検証内容について意見を頂きました。また検証項目のうち出演者のケアについては精神科専門医、SNSへの対応についてはインターネット上の誹謗中傷対策の専門家から、それぞれ意見を頂きました。
検証方針、検証項目、検証方法の具体的な内容は以下の通りです。

・検証方針

1 内部調査により、本番組の制作に関与した制作スタッフおよび出演者、その他関係者に対して聞き取りをするとともに、通信記録、音声記録等を確認し、制作過程および出演者とのやり取りについての事実関係を総合的に認定するとともに、問題点を抽出する。
2 抽出された問題点については、それに至る経緯、背景を含めた原因について明らかにする。
3 問題点を解決するための具体的な対策について検討、提言し、今後の番組制作において教訓とし、万全を期す。
4 検証および内部調査の対象は、本番組の38話のうちコスチュームの一件のシーンとし、同38話の収録日である2020年1月21日以降の制作、配信、放送に関わる事項を中心とする。

・検証項目

1 番組制作過程における事実関係の調査
2 出演者のSNSの状況についての認識と対応方法についての把握
3 出演者のケアについての事実関係の調査
4 今後の番組制作ならびに出演者のSNSへの対応、心のケアについての提言

・検証方法

1 制作スタッフ・技術スタッフからの聞き取り
2 出演者からの聞き取り
3 出演者の所属事務所の関係者からの聞き取り
4 制作スタッフと出演者および所属事務所、所属団体等の関係者との通信記録の内容確認
5 撮影の前後において記録された収録現場での打合せ等の音声記録の内容確認
6 本番組の38話について収録されたすべてのVTRの内容確認
7 外部の専門家からの意見取得

<聞き取りに関して>

主に、制作現場に関わる制作スタッフ、技術スタッフ、出演者、木村花さん所属事務所、計27名を対象として行いました。
制作:プロデューサー4名、ディレクター8名、アシスタントプロデューサー1名、アシスタントディレクター3名、PR担当1名(計17名)
技術:カメラマン2名、音声1名、カメラアシスタント1名(計4名)出演者:コスチュームの一件が起きた当時に同居していた出演者(計4名)
木村花さんの所属事務所:役員、マネージャー(計2名)

撮影現場に参加しない、または出演者と接点がない制作スタッフからは聞き取りをしておりません。また、出演者のうち1名の方は、ご本人に直接、また所属事務所等の関係者を通じて話がしたい旨のご連絡を致しましたが、お話をお聞きすることができませんでした。

また、本番組は3月28日より収録を中止し、出演者は撮影から離れ、各自の生活に戻っていました。そのため、収録中止期間中における出演者同士、および出演者と所属事務所、所属団体、出演者のご家族、その他関係者とのやり取り、関係等について、聞き取りのご協力を得られていないものについては、確認ができておりません。

<調査・聞き取り方法>

原則、スタッフは対面で個別に行い、その後に制作スタッフ全員を集め、経緯の認識に齟齬が無いかについても確認を行いました。調査が必要な場面ごとに複数回に渡って聞き取りをし、映像音声素材の確認、管理データや通話記録の照会も行いました。出演者は対面で一人ずつ聞き取りを行いました。(事務所所属の出演者はマネージャーも同席)

3.検証点

(1)-番組制作上の問題について

本番組は、毎回冒頭に「台本は用意していません」というテロップを表示しており、予め創作した台本は存在せず、番組内のすべての言動は、基本的に出演者の意思に任せることを前提として制作されていました。

今回の検証では、本番組の制作スタッフ、出演者、その他関係者に聞き取りを行いましたが、こうした前提に反して、制作側が出演者に対して、言動、感情表現、人間関係等について指示、強要したことは確認されませんでした。

一部の報道等では、本番組において、いわゆる「やらせ」があり、上記テロップや番組のコンセプトに虚偽があるかのような点が問題視されています。いわゆる「やらせ」とは、存在しない事実を捏造したり、制作スタッフが出演者に対し、事実を大きく歪曲したりするよう指示しているにもかかわらず、それらがないかのように表示することを意味すると理解されるところ、そのようなことは確認されませんでした。

番組制作にあたっては、制作側と出演者の間で、撮影の方針や、スケジュール、テラスハウスでの生活に関することなど、最低限のルールを相互に確認することが必要不可欠です。そのため、出演者及び所属事務所とは予め出演契約書(同意書兼誓約書)においてこれらを確認し、同意を得た上で、制作に臨んでいました。

番組のコンセプトに基づき、映像のクオリティや雰囲気を維持するためには、一定の撮影方針を出演者に理解し、守ってもらう必要があります。

また、撮影時間、撮影場所、制作体制等の制約により、場面設定上必要な場合には、合理的な範囲で出演者に協力をして頂くことが必要になります。例えば、撮影準備の関係で帰宅時間を調整してもらったり、食事のシーンで、料理のクローズアップを撮影するため、食べ始めるのを待ってもらったりすることがありました。

更に、番組内における出演者の行動やロケ、イベント等の企画については、制作側の事情で撮影が困難な場合や、番組のイメージや世界観を大きく損なう場合、安全面や著作権保護等への配慮が必要な場合、コンプライアンス上の問題がある場合等に、実施を止めて頂くことがありました。一例として、撮影許可が得られない場所でのロケを出演者が希望した場合に、別な撮影場所の再提案を依頼したことがありました。

他にも、収録現場においては、制作スタッフは出演者から日常的に様々な相談を受けておりましたので、これに対して提案や助言をすることもありました。

また、撮影を前提としたテラスハウスでの生活において、制作スタッフから出演者に考えを聞いたり助言をしたりすることもありました。

しかし、いずれの場合についても、専ら制作側が判断すべき事項を除き、出演者の意思に基づいており、出演者の意思に反して指示、強要するようなことは確認されませんでした。

一部の報道等では、本番組の制作スタッフが木村花さんのSNSを炎上させることを企図して、38話の収録時に、木村花さんに対して他の出演者にビンタをするよう指示したのではないかとされています。また、38話の収録は2020年1月21日に行われましたが、このエピソードが配信された3月31日以降に、木村花さんが親族や友人に対して、制作スタッフからそのような指示を受けたと発言していたことも、一部報道等で伝えられています。

このエピソードでは、木村花さんがプロレスのコスチュームを誤って洗濯されたことについて、ダイニングルームでの話し合いの場で、他の出演者に抗議するシーンがあり、その内容についての批判が、木村花さんのSNSに投稿されました。

本検証では38話の収録の前後を含め、制作スタッフと木村花さんとの間で、どのようなやり取りがなされていたかについて、以下の通り詳細な経緯の確認を行いました。

●コスチュームの件が発覚した際のLINE等でのやり取りについて

1月21日の制作スタッフや出演者のLINEのメッセージの記録によれば、当日午前中、テラスハウスにいた他の出演者から、前日より旅行に出かけていた木村花さん宛に、木村花さんが洗濯機の中に置き忘れたと思われる衣類が、男性出演者の衣類と一緒に洗われ乾燥された状態で置いてある旨の連絡が入ります。それを受けて、同日午後に木村花さんから女性スタッフに、誰が洗濯をしたのか確認してほしいと連絡があります。女性スタッフは撮影で外出をしていたため、木村花さん自身で他の出演者に連絡して確認するように返信しています。

その後、洗濯をした人物を特定できたという木村花さんから女性スタッフに対し、「これで縮んでたら張り手する」というメッセージがLINEで送られてきます。女性スタッフは、木村花さんが怒っている様子を認識したものの、撮影で外出中だったため、このメッセージについては肯定も否定もしていません。

女性スタッフは、外出先での撮影終了後、打合わせを行うためにテラスハウス近くのスタッフルームに戻りました。そこに、テラスハウスに向かった男性スタッフから、既にテラスハウスに到着し、コスチュームの状態を確認した木村花さんの様子について、「洗濯の件で相当キレてます」というLINEの連絡が入ります。その後、さらに電話で「とにかく怒っている」との連絡を受けたため、スタッフルームにいた女性スタッフと他のスタッフたちは、打合わせをキャンセルし、状況確認のためテラスハウスに向かうことになりました。

●テラスハウスに戻ってからのやり取りについて

テラスハウスでは、女性スタッフを含むスタッフや出演者が、木村花さんから話を聞いています。その際、木村花さんは、コスチュームに対するご自身の強い想い、コスチュームが傷んだことへの悲しみと、誤って洗濯した男性出演者に対する強い怒りの気持ちを、時に泣きながら訴えました。

スタッフたちは、木村花さんのコスチュームや他の衣類が入っていることに気づかずに、その上に重ねて衣類を入れて洗濯をすることは、洗濯機の形態、設置状態等から通常では考えにくく、また、共同生活をする上での注意を欠く行動であったと考え、木村花さんの怒りはもっともなものと受け止めました。また、1つ前のエピソードである37話で描かれている通り、木村花さんは、6日前にこの男性出演者を含む複数の出演者と京都へ旅行をした際に、この男性出演者による周囲に配慮を欠く行動に対して強い不満を抱き、他の出演者や制作スタッフに対しても、その感情を露わにしていたとのことでした。

そうした経緯があった上での出来事だったこともあり、周囲のスタッフや出演者は、木村花さんの激しい怒りの感情を理解する姿勢を示し、悲しみと怒りの気持ちを訴え続ける木村花さんに「分かるよ」「そうだね」「ありえないね」などと相槌を繰り返し、その気持ちに同調し、落ち着かせようとしたとしています。このやり取りの過程で、別の女性スタッフは、木村花さんから、男性出演者に対して「手が出ちゃうかも知れない」といった発言があったと証言しています。しかし、木村花さんの発言は、男性出演者への怒り、悲しみを訴えている中での一連の心情表現の一つであると捉えたため、このスタッフは同調し、相槌を打ったとのことです。

ここまでのやり取りにおいて木村花さんから「話したら少し落ち着いた」という趣旨の発言があり、その後、冷静さを取り戻した様子が見られたため、ダイニングのシーンの撮影を進めることになりました。

本検証では、ダイニングでの話し合いのシーンに至る一連の流れの中で、木村花さんと接点のあった制作スタッフ、技術スタッフおよび他の出演者ら10名に対して、この前後のやり取りを含めて聞き取りを行いましたが、これら10名からは、スタッフが木村花さんに対してビンタをするよう指示、強要した、或いは指示、強要するのを聞いたという証言はありませんでした。また、一部報道等にあったような「カメラの前でキレろ」というような発言も確認されませんでした。他の出演者の証言によれば、スタッフが木村花さんに対して、けしかける、或いは怒りを煽るような様子は無かったとのことでした。

また、「これで縮んでたら張り手する」という木村花さんのメッセージを肯定したり、張り手やビンタを指示したりする趣旨のメッセージも見つかりませんでした。加えて、38話の映像の編集についても、収録したすべてのVTRの内容を確認しましたが、編集後の映像では一連の経緯がほぼ使用されており、実際に起きた事と異なる印象を与えようとするような操作は確認されませんでした。

●ダイニングのシーンの終了後の会話について

一方で、当日の収録時のマイクの音声データを確認したところ、ダイニングで木村花さんが男性出演者の帽子を脱がせて投げた一連の場面の収録後、別室で、撮影カメラもないオフの状態において、木村花さんと他の女性出演者だけで話をする音声データが、技術スタッフがマイクを切るまで1時間近くにわたって記録されていました。その中で、木村花さんは、「いきなり怒ってるわけじゃない」「ずっと我慢してきたけど、これだけは許せない」「仕事道具をこういうふうにされたのだけは本当に私のことを怒らせた。怒らないもん、人にここまで」「帽子ふざけやがってと思って帽子にもイラついた」などと、この件についての怒りが通常には無い、特別なものだったことを語るなど、なぜ男性出演者に対して強い怒りを感じ、ダイニングのシーンでの言動に至ったかについて話をしています。

この会話の中で、木村花さんは、男性出演者の帽子を脱がせて投げた行為について、男性出演者が謝罪するべき状況であることは明らかなのだから、礼儀を弁えて欲しいという趣旨だったと語っています。また翌日の1月22日の収録準備中の音声データにも、木村花さんと他の女性出演者との会話が記録されており、ここでも木村花さんは同様のことを話しています。さらに、1月23日の収録時にも、木村花さんは制作スタッフに対して、その行為の際の発言について、「本当は、謝るときくらい帽子を脱げ、と言いたかった」(なお1月21日の撮影では、ふざけた帽子かぶるなとの発言)と話していたとのことです。

このことから、木村花さんの行為は、帽子をかぶったまま聞いている男性出演者に対して、あくまで礼儀と誠実さを求めたものであり、社会的非難を招くような暴力的行為の意図は全く無かったのではないかと考えます。

それにも関わらず、38話の配信時には、木村花さんの行為を暴力的だと断定して、SNS上に一方的な批判のコメントが寄せられました。木村花さんにとっては、正当な理由があって悲しみと怒りの気持ちを伝え、礼儀と誠実さを求めただけの行為が、多くの人からの批判の的となり、しかも暴力的であると決めつけられたことは、予想外であり、非常に驚かれ、ショックを受けたのではないでしょうか。

この点については、制作スタッフも同様で、大切なコスチュームを台無しにされた木村花さんの怒りは妥当なものであると感じており、木村花さんのこの行為について、多くの批判が寄せられることは予見できなかったとしています。とりわけ木村花さんのSNSは、出演開始時から一貫して批判が少なかったこともあって、38話で炎上があったことを知った時には、多くのスタッフが「なぜ花さんが」と驚いたと述べています。

本番組では、テラスハウスでの収録映像について、スタジオの出演者がコメントする構成をとっていますが、ダイニングのシーンの直後のスタジオトークでも、木村花さんを責めるような内容ではなく、むしろ相手の男性出演者に対する批判的な意見が中心でした。

本件に関する一部報道では、ダイニングのシーンでの木村花さんの行為について、帽子を「叩き落とす」「はたく」と表現しており、暴力的な行為であるとの認識を示しています。しかし、翌1月22日の収録時の音声データでは、木村花さんは「帽子を脱がせて、投げた」と言っています。また、実際の映像を見ても、木村花さんの言葉の通り、帽子を脱がせて投げる動作であることを確認できます。同じ行為を指していながら、その表現には大きな隔たりがありますが、木村花さんには暴力的な意図は無かったはずです。

しかし、行為者の意図をどう捉えるかは、受け手によって異なるものになることは避けられません。制作スタッフは、この時の木村花さんの気持ちを理解し、同調していたことから、その行為を暴力であるとは捉えませんでした。しかし、後にSNSで批判が寄せられたという結果を考えれば、スタッフは同調するだけでなく、もっと冷静さを求めるような姿勢を示し、言葉をかけるべきだったのかも知れません。落ち着いてもらおうという気持ちからだったとしても、スタッフの同調が、その場面における木村花さんの怒りの表現が、より激しいものとなることに繋がったのかも知れません。出演者の様々な気持ちを受け止めつつも、強く衝突することが予測されるような場面では、より適切な提案、アドバイスが必要だったのではないかと考えております。

●38話に関する一部報道について

一部の報道等では、制作側が木村花さんに対して、プロレスのヒール(悪役)のキャラクターを演じるよう指示しており、木村花さんのSNSを炎上させる意図があったと伝えられています。

しかし、制作側からそのようなキャラクター設定を求めるような指示をしたことは確認されませんでした。制作スタッフは、木村花さんの出演を決定した際の判断について、次のように語っています。

・堂々としていて元気。華がある。会話内容も明快。性格がかわいい。素直で礼儀正しい。
・プロレスラーという職業も、今までいなかったので、非常に魅力的。プロレスラーとしてのプライドもしっかり持っていて、自信がある様子だったが、制作側が質問した「してみたいデートプラン」が、ピクニックに行きたい、花火に行きたい、水族館・動物園・遊園地に行きたい、など初々しくて、かわいかった。
・彼女が恋をしたら、プロレスラーという一般的イメージとのギャップもあり絶対かわいく描けるな、とスタッフ間で話し合い、満場一致でほぼ内定。
・スタジオ部分の出演者がプロレスファンなので、スタジオキャストにも好かれそうだなとも思った。

以上のように、制作側は木村花さんがプロレスラーらしく振舞うことではなく、むしろそうしたイメージとは逆の面を見せて欲しいと願っていたとしています。実際に、木村花さんが出演されている20話以降の番組内容についても、プロレスの仕事を収録している部分を除けば、プロレスラーらしく振る舞っているような部分はなく、むしろ仕事の時とは異なる日常の姿にフォーカスされていることが明らかです。

制作スタッフは、出演者がテラスハウスに入居する際や撮影期間中に、生活・撮影に対する「心構え」として、次のような説明をしています。

・自分の心のアンテナの感度レベルを、1から5や10に上げ、豊かな感覚をもって、ここでの生活をしてほしい。
・1番やって欲しくないのは0を1にすること(ないものをあるように見せる嘘)である。
・カメラの有無で言動・行動を変えないでほしい。
・スタッフは相談にものるし提案もするが、本人の気持ちを最優先する。

制作側は、出演者が他の出演者との関係に興味をもって過ごすこと、また、特定のキャラクターを演じることではなく、出演者がのびのびと自分の気持ち、感情を表現することを求めており、それによって出演者たちの関係に自然な展開が生まれることを願っているとのことでした。

SNSを炎上させようとする意図については、前述の通り、制作スタッフは木村花さんに多くの批判が寄せられることを予見できておらず、そのような意図はなかったとしています。

また、木村花さんの場合に限らず、制作スタッフの全員が、出演者のSNSの炎上を煽ろうとするような意図を持つことは無いとしています。それは、出演者がSNSで批判や誹謗中傷に晒されれば、精神的なダメージを受け、テラスハウスでの行動にも影響が出てしまい、本来の自己表現が損なわれることが懸念されるなど、番組制作にもマイナスの影響しかないためだとしています。

こうした悪影響を甘受しても、なおも制作スタッフが出演者のSNSを炎上させる意図を持つ要素があるかについても調査しましたが、そのようなことは確認されませんでした。例えば、視聴率および配信数を向上させることを目的とし得るかどうかについても確認しましたが、出演者のSNSの状況と地上波放送の視聴率、フジテレビが行うインターネット配信の視聴数の間には、過去のエピソードを含む一連のデータを検証しても、何ら相関が見いだされず、そのような動機を持つことはないと考えます。また地上波放送については、放送時間帯が深夜0時以降であり、視聴率の主要な評価基準の一つである全日時間帯(6時から24時)に含まれておりません。

また、一部の報道等では、木村花さんの番組からの卒業に関して「花ちゃんがいると視聴率が取れるから」等とスタッフが引き留めたのではないかとされています。しかし、木村花さんとは昨年末から卒業に向けた方針について徐々に話し合いを始め、今年1月下旬からは、ご本人の意向をもとに、3月末までの卒業に向けたプランについて検討しており、無理やり引き留めるようなやりとりは確認されませんでした。(その後、コロナ禍による収録中止などの状況変化により卒業に関する撮影は延期となりました。)

なお、一部報道等では、後日、弊社が所属団体に対し「テラスハウスを辞めたいっていう話は聞いたことがありません」というような説明をしたとありますが、所属団体に対しては、ご本人から卒業の希望を頂いており、ご本人の意向を踏まえて話をしていた旨をお伝えしております。

番組の制作スタッフは、常日頃から出演者とよく話し、心を通わせることで、双方にとってより良い番組作りを目指していました。しかし、テレビのベテランの制作者と、社会経験の少ない若い出演者が向き合う時に、立場の違いを理解して、言葉の選び方や、言葉をかけるタイミングなど、十分に配慮の行き届いたものであったのか。出演者の気持ちや意向に配慮した場合、どこまで描くことが適切であったのか。

私たちは制作者と出演者の関係の在り方について、自らに問うて行かなければならないと考えております。

4.検証点(2)-SNSの炎上についての認識および対応について

出演者のSNSの状況については、複数の制作スタッフが、すべての出演者のSNS(Twitter、Instagram)をフォローし、確認していました。

しかし、コメント数を計数的に把握、集約したり、その内容、傾向を一定の基準で分析したりするような、システマティックな対応はなされていませんでした。

また、悪質な誹謗中傷の多くは、SNSを運営する本人だけが閲覧可能なDM(ダイレクトメッセージ)で発信される傾向がありますが、制作側は出演者から相談を受けた場合を除いて、その内容を知ることができませんでした。

SNSの炎上への対応については、本番組では出演者全員に対して、SNSの使用上の心構えを説明し、アドバイスをしていました。

また、出演者のSNSに脅迫や殺害予告など危険性のあるメッセージがあった場合には、弁護士を紹介して法的対応を検討し、また警備員を配置し、警察に相談するなどの対応を図っていました。しかし、それ以外の場合には、出演者とも話し合った上で、沈静化するのを待つという対応がほとんどでした。

制作スタッフは、38話の配信後もSNSの状況を確認していましたが、39話目の配信以降、木村花さんへの批判的コメントは減少し、他の出演者に比しても少なかったと認識しています。

その後、5月14日に38話に関連する映像をYouTubeで配信しておりますが、これについて一部報道では、炎上を更に煽ることを意図していたのではないかとされています。

本番組では、原則として、Netflixの配信日である毎週火曜日に、番組公式YouTubeにおいて未公開動画を配信しており、Netflixの配信回の内容と同時期に撮影されたシーンや、新たなインタビューなど、本編では未使用のものを複数本紹介しています。5月14日のYouTube配信では、38話以降の未編集素材を含め、41話の未公開動画として3本の映像を配信しました。

この映像の配信に至る経緯ですが、まず木村花さんが38話で起きた出来事の背景について、視聴者に十分に伝わっていないとして不満を表明しており、制作スタッフはこれを和らげたいと考えていました。

制作スタッフは、38話の前後を含む素材を確認したところ、配信されなかった部分も伝えることで、視聴者からの木村花さんの評価を回復できるのではないかと考えました。

しかし制作側の意図とは逆に、このYouTubeの配信後にも批判的なコメントがありました。配信する映像の内容については制作側も検討を重ね、否定的な印象を与えそうな部分を避けて制作しましたが、結果を考慮すると、さらに配慮が必要だったものと考えております。ただ、この時のSNSのコメント数は、38話の配信後よりも大幅に少なく、また木村花さんへのネガティブなコメントは、配信映像の他の出演者に比しても少なかったと認識しています。

その後、5月18日に38話が地上波で放送されましたが、通常の場合、SNSはNetflixの配信の最新話の話題で持ちきりとなり、1ヶ月以上遅い地上波放送時のコメント数は少ないため、制作スタッフは、この放送についても同様であったと認識しています。

ただし、上述の通り、DMでの誹謗中傷は本人以外が把握することは困難で、木村花さんのDMについても、スタッフが直接ご本人から見せてもらった一部を除き、把握しきれてはいませんでした。なお、事後的な検証ですが、本番組についてのTwitterにおけるコメント数等については、調査会社に依頼して以下の通りであったことを確認しています。

<Netflix配信日>

・通常、Netflixの配信日のテラスハウス全体の話題量は、1日に6千~8千件程度。Netflixで38話が配信された3月31日は、22421件を記録。配信翌日の4月1日にかけて話題となったが、4月3日以降は通常の水準に戻った。話題全体に占めるネガティブなコメントの割合は、配信直後の1時間は40%程度だったが、翌日にかけて10~20%となり、4月2日以降は通常時と同水準となった。

・コメントの頻出単語には、「〇〇が悪い」とトラブルの責任を名指しで追及するものや、「つらい」「しんどい」「無理」など番組の展開に対する視聴者側の心的負担を訴えるものが目立った。

<地上波放送日>

・通常、地上波での放送日のテラスハウス全体の話題量は、2千~4千程度。地上波での38話の放送後の話題量は、放送直後の1時間に1500件程度だったが、その後急速に減少し、3~4時間後には、1時間あたり200件程度で、5月18日の合計で3202件とNetflixの配信時よりも大幅に少なかった。

・また、話題の大半は、同時間帯にNetflixで配信された最新話に関する内容であった。話題全体に占めるネガティブなコメントの割合も、5月18日が12.1%と通常時と同水準であった。頻出単語にも、最新話で発表された新メンバーに関するポジティブなものが多数検出され、38話のコスチュームに関するものは少なかった。

・Twitterのトップハッシュタグに木村花さんの名前は検出されず、話題の中心はNetflix最新話の主な登場メンバーとなっていた。リツイートも同様に、最新話に関するネットニュースなどが多くを占めている。リツイート7位にはタレントによる木村花さんに関する言及がランクインしているが、好意的な内容であった。

SNS上の批判的コメントの状況については、計数的な集約を含めて、より的確に捉えるとともに、投稿の数に限らずDMによる誹謗中傷についても、出演者のご了解を頂いた上で、その悪質性、攻撃性の程度や、違法性について確認し、出演者にどれほどの心的苦痛を与えているかについて、制作者としてもしっかりと把握するべきであったと考えております。

5.検証点(3)-出演者へのケアについて

冒頭にも記載しましたが、本項目においても、出演者及びその他関係者の個人の発言等については、事実関係の説明を行うために最低限必要であると判断したもの以外については言及しておりません。また、出演者及びその他関係者のプライバシー情報、センシティブ情報等については、記載しておりません。

本番組は、コロナウイルスの影響により3月28日から収録を中止しており、出演者は共同生活をやめ、全員が番組の撮影から離れ、各自の生活に戻ることになりました。

木村花さんのSNSに批判的なコメントが増えたのは、3月31日に38話を配信した直後でした。木村花さんが3月31日に自傷行為に及んだことについて、制作スタッフは、木村花さんのSNSを見て知り、直後のやり取りで身近な女性の家にいて、無事であることを確認しました。

その後、所属事務所やその他の関係者とも連絡を取り合いながら、複数の制作スタッフが木村花さんと電話やLINEで連日連絡を取り合い、24時間いつでも連絡するよう伝えるとともに、複数回にわたり自宅を訪問して話し合いました。

4月4日には、収録は中止しておりましたが、木村花さんと一部のスタッフが一時的にテラスハウスで共同生活することを提案しました。しかし、この時点で木村花さんは身近な女性を中心とする方々と一緒に過ごされており、一人にはしないとのお話もありましたので、コロナウイルスについて心配される状況であったことも考慮し、制作側からはそれ以上強くは要請せず、結果的に実現しませんでした。

4月8日に、制作スタッフ3名が木村花さんに面会(1名はビデオ通話)して話し合い、その際に心のケアを受けられるように専門家の受診を提案し、快諾頂いたことから、4月13日または14日に受診するよう調整しました。しかし、13日になって、ご本人からコロナウイルスの感染拡大もあり、もう少し落ち着いてからにしたいとの意向が示されたことから、受診には至りませんでした。この点、木村花さんの身近な方々とも連携するなどして、さらに継続的に受診を働きかけるべきであったと考えております。

SNSへの批判的コメントへの対処については、木村花さんに複数のスタッフからアドバイスをしておりました。4月2日および7日には、木村花さんから制作スタッフに、SNSのアプリを消去したとのメッセージがLINEで送られてきました。しかし、4月19日に面会した際には、木村花さんが再びSNSを使っていることが分かりましたので、ご本人と相談の上、SNSのアプリを一緒に削除しました。

その後、5月3日に木村花さんから、仕事の関係でやはりSNSを再開したとの連絡がありました。制作スタッフは、木村花さんに対して、SNSの更新を同僚の方に頼むなどの対応ができないか尋ねましたが、ご本人が自ら行うことに強い意向を示されたため、これを尊重し、DMだけは見ないようにお願いしました。

その後も木村花さんと制作スタッフは頻繁にやり取りをしていましたが、制作スタッフは木村花さんが、元気を取り戻しており、収録再開後の卒業に向けた撮影や、放送、配信について肯定的な気持ちを維持しているものと捉えていました。

前述の通り、木村花さんのSNSへのコメント数も、39話の配信以降減少していると認識しており、その後の状況についても、木村花さんに連絡を取って確認していました。

5月14日には上述の通り、YouTubeで38話に関わる未公開動画を配信しましたが、この時にも制作スタッフは木村花さんとLINE、電話でやり取りをしており、その際にDMでネガティブなコメントがあることを聞きました。しかし、それ以前からの木村花さんとのさまざまなやり取りも踏まえて、このスタッフは、木村花さんがSNSの悪意あるコメントについても強い気持ちを保っていると認識していました。また、コスチュームを誤って洗濯した男性出演者がYouTubeの配信を見て木村花さんに連絡をして来たこと、コロナウイルスの影響が収まったら食事に行く約束をしたことを報告し、非常に喜んでいたとのことです。

5月18日に地上波で38話が放送された際にも、同じスタッフが木村花さんと連絡をしており、SNSにネガティブなコメントがあるとの話を聞きましたが、この場のやり取りでは、猫を飼い始めたなどの話を聞いており、木村花さんが元気で、深刻に悩んでいる様子は無いものと認識しました。

また、この時期には、緊急事態宣言の解除も視野に入って来たことから、収録再開後の卒業のプランとして、収録中止前から検討していた、お母様とのエピソードを中心に準備を進めておりました。38話が地上波で放送された翌日の5月19日には、木村花さんからスタッフに連絡があり、プランを変更し、他の出演者とのエピソードにできないか、との相談もありました。

3月31日に木村花さんのSNSが炎上して以降、制作スタッフが木村花さんと、さまざまなコミュニケーションを図っていた中で、以上のような状況を総合的に考慮し、番組の放送、配信を継続し、収録再開後には卒業に向けた撮影を行うことが可能であるものと、制作側は判断していました。しかし、制作スタッフは上述の通りのケアを行っていたとは言え、スタッフ以外の所属事務所や所属団体、木村花さんの身近な女性を中心とする方々など、それぞれのケアの状況を含めた全体を把握してはいませんでした。また受診を調整しながら、結局実現せず、専門家の協力を得ることができませんでした。この点については、木村花さんへのケアの在り方、健康状態についての認識について、制作側としても、結果的に至らぬ点があったものと考えております。

なお、一部報道等において、木村花さんが収録中に過呼吸の状態になったにも関わらず、制作側が無理に撮影を継続したと伝えられています。

制作スタッフの証言によれば、今年2月15日の収録時に、木村花さんが一時的にそのような状態になったとのことでした。この時、木村花さんはテラスハウスの一室で、他の女性出演者と3人で話をしており、その模様を撮影していましたが、会話の途中で木村花さんが部屋を出て行き、撮影を止めました。

女性スタッフが様子を確認しに行ったところ、木村花さんが階段の下で具合が悪そうにしており、過呼吸のような状態であることが確認されましたので、その他のスタッフ、出演者とともに介抱しました。暫くして落ち着いた様子が見られ、リビングルームのソファに移動して休んでいました。この間には収録を停止し、木村花さんのことを撮影していません。

その後、それまで木村花さんと話をしていた他の女性出演者2名の意向を確認したところ、できればもう一度、木村花さんと話をし、気持ちを理解していることを伝えたいとのことでした。症状が落ち着いて30分程度経った頃、女性出演者2人もリビングルームに移動し、木村花さんとの話を再開し、その模様を収録しました。

このシーンでは、会話も前向きな内容で終了し、収録直後、スタッフが3人のもとに行って話をしたところ、いずれも落ち着いた様子で、他愛もない会話をしており、精神的なストレスを感じているような様子は無かったとしています。

通常の収録時には、出演者、スタッフが1週間のほとんどを共に過ごしており、悩みがあれば周囲の人間がすぐに相談に乗ることができました。過去の事例でも、SNS上の批判や誹謗中傷に悩んでいる出演者が、同世代の出演者やスタッフに相談することで乗り越えることがありました。

木村花さんは、いつも明るく、礼儀正しく、堂々としているとして、制作スタッフの全員が取り分け思いを寄せていた存在でした。そして通常であれば、木村花さんと制作スタッフの間には、いつでも気軽に相談してもらえる信頼関係があったと考えていました。

今回の検証の聞き取りの過程では、木村花さんが、SNSでの誹謗中傷以外についても悩まれていたことがあったという証言もありました。こうしたことについても、スタッフが身近にいれば、もっと話を聞かせて頂くことができたかも知れません。

コロナウイルスの影響により番組の収録が中止されてしまったことにより通常のケアを提供できなくなっていた中、木村花さんに関係する方々と、より緊密に連携しながら、その不足を何とかして補うケアを実現できなかったか、他に取り得る手段がなかったのか、私たちの力が及ばなかったことが悔やまれてなりません。

6.今後に向けて

これからの番組制作において、とりわけ一般の方に長期にわたって出演して頂く番組においては、出演者のSNSが炎上するリスクを考慮し、より適切な対応ができる体制を整備する必要があると考えます。

今後は、次の2つの基本方針に則って、対策を講じて参ります。

1 SNSへの対応-誹謗中傷は絶対に許さないという強い姿勢

本番組において制作スタッフは、出演者のSNSの状況をシステマティックに把握できていませんでした。しかし、今後はインターネット上の誹謗中傷対策を専門とする企業の協力を得るなどして、SNSの状況について、計数的な集計、分析を含め、より的確に捉える体制を整備してゆく必要があると考えます。

それにより、炎上や誹謗中傷をすぐに把握するとともに、悪質な投稿に対しては、法的措置を講じるために必要となる投稿画像、URL、投稿者のプロフィールなどを、証拠として確実に保存し、迅速かつ的確な対応を図ります。

また、これまでは、出演者のSNSへの誹謗中傷に対しては、脅迫や殺害予告など、危険性がある場合を除き、沈静化するのを待つという消極的な対応が中心でした。しかし、今後は、「誹謗中傷は絶対に許さない」という強い姿勢を示し、出演者本人、所属事務所と相談しながら、より積極的な対応を図ってゆくべきであると考えます。

本検証では、SNSへの対応について、弁護士、精神科専門医、インターネット上の誹謗中傷対策の専門家の意見を得ました。

誹謗中傷の中には違法性を問えるものも多く、発信者情報開示請求を申し立てること以外にも、DMに対して代理人名で警告文を送るなどの対応が可能であるとの意見も得ました。

また、周囲の人間が誹謗中傷を許さないという姿勢を示し、具体的な対策を講じることは、悩んでいる人へのケアの観点からも、非常に有効であるとの助言も得ました。

もちろんSNSは個人が運営するプライベートな領域のものであり、放送局や制作会社が関与する場合には、出演者本人および所属事務所その他の関係者と、十分に協議し、その同意のもとに対応を図る必要があります。

今後、インターネット上の悪質な誹謗中傷に対しては、専門家の協力を得ながら、毅然とした対応を図る所存です。

2 出演者へのケア-幾重にも重なるケアの実現

出演者へのケアについて専門家のご意見を伺ったところ、心に悩みを抱えている人がいる場合には、相談窓口を紹介するだけでは、結局あまり活用されないことがあるので、周囲にいる多くの人が「見て見ぬふりはしない」という姿勢を示すことが重要であるとの提言を頂きました。

もちろん、出演者が制作スタッフには言えないような悩みを抱えている可能性もありますので、外部の専門家の協力も得ながら、スタッフ以外の人にも相談できるような環境が必要ではないかとのご意見も併せて頂きました。

したがって、周囲の人間が積極的に本人の状態を把握し、日々のコミュニケーションを心掛けつつ、必要に応じて外部の専門家にも相談できる機会を確保するなどして、しっかりとサポートできる体制を整えなければならなかったと考えています。

今後、制作会社、所属事務所とも緊密に連携し、また必要に応じて精神科専門医、心理カウンセラーなどの専門家の協力を得て、出演者に対して、幾重にも重なる手厚いケアを提供できるようにして参りたいと存じます。

<最後に>

「TERRACEHOUSETOKYO2019-2020」に、ご出演頂いていた木村花さんの尊い命が失われた事に関して、改めてお悔やみを申し上げます。

なお、本件については、BPO放送人権委員会にご遺族から申し立てがなされており、今後、真摯に対応して参る所存です。

この検証結果を踏まえて、二度とこのような事が繰り返されないために、誹謗中傷などSNS対策や出演者の心のケアに取り組むとともに、制作者と出演者の向き合い方についても検討してゆきたいと考えております。

最後に、この場を借りて、改めて木村花さんのご遺族の方々に哀悼の意を表します。

番組審議会の意見・回答
以上

上記の検証報告の公表に際し、事前に、弊社の第三者機関である番組審議会にも報告を行いました。

以下、番組審議委員の意見を紹介します。

<令和2年7月8日開催499回番組審議会番組審議委員の意見概要>

●第三者委員会を設置して客観的視点から調査を行うべきではないか。
●地上波放送において、リアルな喧嘩をみせるのが、適切であったのか
●木村花さんのDM(ダイレクトメッセージ)について、自分がフォローしている人からしか受け取れない設定にするように指導をしなかったのか。双方向を重視して、出演者は一般の人から送られる仕掛けになっていたのか。
●SNS上で攻撃されたツイートないし投稿の数の規模感を伺いたい。どこで介入しないといけないのかという基準を今後社内で作っていく必要があるのではないか。
●木村花さんが「これで縮んでたら張り手する」とのLINEのメッセージをスタッフに送ったとあるが、花さんにイニシアチブがあったとしても、スタッフがけしかけるような応答があったのか。
●出演者との誓約書があり、違反した場合は損害賠償の規定があるとのことだが、これは労働契約の不履行について、賠償予定の禁止を定めた労働基準法16条違反ではないのか。
●報道によると、38話が配信された日に自傷行為に及んだとされているが、どこまで深刻な事態と考えていたのか。地上波で放送されるまで、どういう話し合いが行われたのか。
●SNSでの誹謗中傷の問題を防ぐためには、量だけで判断してはいけない。出演者の精神状況に応じて、週刊誌やネットニュースに載るだけで、仮に賛同コメントが多かったとしても、圧力になってしまう可能性があるということを認識しておかないと、今後の教訓として生かされないのではないか。
●素人の方を出演者として出した時に、精神的にダメージを受けたり、社会にバッシングされたりした時にどうするか。木村花さんが38話で取った行動をおかしいものだとは思っていない。はたかなかった方が良いが、そのぐらいの抗議を示すのは現代女性として当然のことだ。若い子で社会経験もなくて、人々に注目された経験もなくて、日本的な曖昧さの中で欧米型の自己主張があった時にいかに視聴者から過度なバッシングが降りかかってくるかということは、制作側として今後よく考える必要がある。

なお、番組審議委員からの上記ご質問については、上記番組審議会で時間的制約があったこともあり、上記の検証報告中の記載をもってその回答に代えておりますが、上記ご質問のうち以下の4点については、別途に委員の皆様に補足して説明致しましたので、その内容を以下の通り記載します。

<第三者委員会を設置しなかった理由>

この検証の目的は、事実関係の調査とそれを踏まえた今後の番組制作への提言と考えています。

これを踏まえ、今回の検証調査は、社内の責任者らを中心とした内部調査に、複数の法律事務所の弁護士らに参加を依頼し、また、精神科専門医、SNS対応の専門家の協力を得て行いました。まず、本件で、出演者が亡くなられたことの重大性は明らかで、これを厳粛に受け止めており、慎重な調査を踏まえ客観的視点から調査を行うべきと考えております。しかし、事実調査について、これを詳細かつ迅速に進めるためには、外部の独立委員のみの第三者委員会では、調査対象である番組関係者等が、発言を控えたりする懸念があり、積極的な証言を促すためにはむしろ、番組制作の事情に通じた社内の責任者らを中心とした内部調査が望ましいと考えました。

さらに、検証における聞き取りの対象となる制作スタッフや出演者の中には、木村花さんが亡くなったことに強いショックを受けている者が複数名おり、外部の独立委員による聞き取りを行った場合、過度な精神的負荷を強いることが懸念されるとともに、却って適切な証言を得られなくなる可能性もあると考えました。

そのため、本件の検証においては、内部調査を中心としつつ、検証の過程で、弁護士にも参加して頂き、検証の精度および充足性、妥当性、信頼性について確認しながら、実施するとともに、さらに、出演者のケアに関わる事項については精神科専門医、SNSへの対応についてはインターネット上の誹謗中傷対策の専門家の協力を得ながら検討を進めており、これにより十分な客観性、公平性を確保しているものと考えております。

なお、検証結果の開示範囲ですが、故人ならびにその他の関係者など、制作スタッフ以外の方々の音声記録、通信記録、証言等が多数含まれております。こうした内容を弊社が一方的に公開することは、これらの方々のプライバシーを損なうだけでなく、名誉及び声望を害し、或いは社会的評価に影響を与えるなど、弊社が想定し得ない事態が惹起されることも懸念されます。したがって、これら内容については、やむを得ない場合を除き、開示することは適当でないと考えております。

<地上波放送において、リアルな喧嘩をみせるのが、適切であったのか>

本番組は、テラスハウスに同居する若い男女のグループが織り成す人間模様について個人的な感情も含めて描いてゆくという性格のものであります。その場合でも、放送にあたっては、番組内の表現について、視聴者に不快な感じを与えないように、放送時間帯に応じて配慮をするなど、今後も留意してゆきたいと思います。

<木村花さんのDMの設定について>

SNSはプライベートなものですので、制作側から特定の設定を指示したり、義務付けたりすることはありませんでした。ただし、出演者がSNSで悩んでいる場合などには、例えば悪質な誹謗中傷が送られることが多いDMは見ないようにアドバイスはしておりました。

<出演者との誓約書について>

この誓約書(「同意書兼誓約書」)は、専門家に監修して頂いて作成したものですが、ご指摘の点につきましては、改めて専門家の意見を求めました。本番組では、出演者および所属事務所と、上記「同意書兼誓約書」を締結しておりますが、これは一般に出演契約と言われるものであり、労働契約ではないとのことでした。本番組における出演者への指示は、一定の期間、テラスハウスに住んでもらうことを基本とし、拘束についてもその限度で緩やかに時間的・場所的拘束がなされるに過ぎません。時間帯に関わらず別の仕事をするのは自由ですし、そのために外出することについても、スケジュールの調整などについて話し合うことはありますが、基本的には特段の制約はありません。このような実態を踏まえて、本番組の出演者の労働者性について、平成8年3月に労働省(当時)から諮問を受けた労働基準法研究会労働契約法制部会が、「芸能関係者」について公表した資料に示された判断基準に照らしても、労働者には該当するとは考えられないとのことでした。また、損害賠償に関する規定についても、契約違反しただけでなく、それによって番組の放送、配信が中止された場合について定めたものです。これは、現実的には、出演者による犯罪が起きるなどの重大な事態しか想定され得ず、制作側としては、そのような事が起きないようにするための抑止力として捉えていました。

本番組は収録を中止しましたので、この契約を新たに締結することはありません。この契約については、専門家から違法なものではないとのご意見を頂いておりますが、今後の同種、同類の契約において公平性が損なわれることのないよう、幅広く専門家のアドバイスを得てゆきたいと考えております。

以上