小説家の村上春樹の作品のように育児についてツイートする「#村上春樹で語る育児」というハッシュタグが盛り上がりを見せていました。村上春樹といえばその独特な文体が特徴的。育児を村上春樹作品のように語ると、寝かしつけすら文学的な世界に!?
「僕はやれやれと絵本を開く。カラスのパン屋さん、今夜八回目の開店だ」
小説家・村上春樹の作品のように、育児のある場面についてツイートする「#村上春樹で語る育児」というハッシュタグに面白い投稿が多数集まっていると注目されています。
村上春樹といえばその独特な文体が特徴的。ネット上では村上春樹風にしてみるというネタは鉄板で、過去にも漫画家・横山了一さんが「もし勇者が村上春樹だったら」を描いた作品を投稿したり、契約書の「甲」「乙」を「僕」「君」に変えると村上春樹風になるといったツイートが話題なったりしていました。
「#村上春樹で語る育児」への投稿を見てみると、例えば寝かしつけの場面を描いたもので、以下のツイートが大きな注目を集めていました。
「何度でも繰り返すのよ私達」
— つなまよら (@tunamayora) 2019年8月29日
ベッドの上で彼女は僕を見上げた。
「何度でも?」
「そう何度でも。私が満足するまで貴方は続けるべきだわ」
「君はいつ満足するんだい?」
「さぁ?私にもわからないの」
僕はやれやれと絵本を開く。
カラスのパン屋さん、今夜八回目の開店だ。#村上春樹で語る育児
完全に村上春樹……!!投稿主のアレンジ力が素晴らしい。ハッシュタグに寄せられた投稿を見てみると、子どものわがままな場面が多いため、子どもは上から目線で僕が「やれやれ」となるパターンが多め。世のパパママの姿が目に浮かびます。
「#村上春樹で語る育児」に寄せられた投稿の一例
#村上春樹で語る育児
— つむぎ (@tumugiguruma) 2019年8月29日
「外に出たくないの。だって濡れてしまうでしょう。」彼女は笑う。僕にはわからない。雨は上がり、地面には水溜まりのひとつもできていない。そう説明するが彼女は真新しい黄色の長靴を履いて笑う。「くつの裏が濡れてしまうでしょう。」
僕は全てを諦めて彼女を抱き上げた。
この2時間、何をしていたのか全く思い出せない。何かをしていたのかもしれないし、何もしなかったかもしれない。
— めーこ®︎8m娘 (@meconecomecocco) 2019年8月29日
しかし何はともあれ、お昼寝の時間は終わってしまったのだ。
真実を見透かしたような黒い瞳がじっとこちらを見つめている。
#村上春樹で語る育児
この2時間、何をしていたのか全く思い出せない。何かをしていたのかもしれないし、何もしなかったかもしれない。
— めーこ®︎8m娘 (@meconecomecocco) 2019年8月29日
しかし何はともあれ、お昼寝の時間は終わってしまったのだ。
真実を見透かしたような黒い瞳がじっとこちらを見つめている。
#村上春樹で語る育児
「つまりさ」身を乗り出して僕は言った。
— 妙齢のおかん (@myourei_no_okan) 2019年8月29日
「母乳は白いけど元は血液なんだ。血液を2時間おきに抽出され、しかも乳首も痛い。それなのに君は、いとも気軽に、そろそろおっぱいあげた方がいいんじゃない?と言うんだね」
最後の方はほとんど悲鳴に近かった。#村上春樹で語る育児
「ねえ、お腹空いたわ」
— 塩うに (@DswSM29z0jnpETv) 2019年8月29日
僕は味噌汁をお椀によそい、じゃが芋と人参を匙でつぶした。細心の注意を払い、彼女の口元に運ぶ。
「やめて」彼女は匙を払いのけ泣き出した。匙は奇妙な角度で転がっている。「一人でできるもん」
彼女は言った。#村上春樹で語る育児
彼女は柔らかな敷物の上で裸足になり、くるりくるりと廻った。何度も何度も廻った。
— 小宮ふみ@祝2y! + 31w妊娠糖尿切迫入院 (@komihumi) 2019年8月28日
「目が回らないの」
私は彼女に問う。彼女の細い髪がふわりと舞って私の視界をけぶらせる。
「廻っているのは世界なの」
そんな笑顔を私に向けながら彼女は机に体をぶつけて泣いた。
#村上春樹で語る育児
「何故こんなになるまで放っておいたのよ」
— 雅樹 (@masazeroque) 2019年8月29日
「慣れちゃったんだ。おむつが重い事にも、泣かないでいる事にもね。それに遠くから見れば」僕は言った。「大抵のものは綺麗に見える」
「ねえ」彼女は器用に僕のおむつを替えながら首を振った。
「一生そんな風に生きていくつもり?」#村上春樹で語る育児
#村上春樹で語る育児
— もてぃこ (@mochin22) 2019年8月28日
もう、この台詞を言うのは何度目だろう。聞き入れてもらったことなどないというのに。
「明日の準備、終わったの?」
彼、もしくは彼女の耳は、その台詞をまるで葉っぱの上の水滴のように転がして音符にし、そして今夜も踊るのだ。
「嫌なの。」
— しぐま (@kasunuma344) 2019年8月29日
結局のところ、彼女は僕の話を聞くつもりはなかった。いつから彼女はこうなってしまったのだろうか?僕は溜息をつき、黙って追いかけた。
「今日は長靴にするって決めていたの。」
外は晴れていたが、彼女にとってそれはどうでもいいことのようだった。#村上春樹で語る育児
「悪いけど、今プラレールを組み立てているんです、あとにしてもらえないかな?」
— 茶のもう (@teanomonomo) 2019年8月28日
「プラレール?」
彼女はあきれたような声を出した。
「あなたは朝の6時半にプラレールを組み立てているの?」#村上春樹で語る育児
「…ここで、かい?」
— ハパ (@niconicoikuji) 2019年8月29日
僕は訊き返した。
「そう、ここでよ。ここで抱っこして」
こうなることは家を出るときに予想していたのかもしれないが、あるいは違う可能性を期待していたのかもしれない。
僕は腕に彼女を抱きかかえ、床に置かれた米を見つめた。#村上春樹で語る育児
「ここに暖かな離乳食がある。鮭を柔らかく煮てあるんだ。」
— maitake55 (@maitake55) 2019年8月29日
僕が言うと彼女はほんの少し首を傾げた。「どうかしら」という風に。
「カブとそぼろの中華風は?ブライアン・ウィルソンだってこれを食べたらウクレレを弾きだす」でも彼女は口を2ミリくらいすぼめただけだった。
#村上春樹で語る育児
「眠いの」
— 山田 剛也@山田治療院 (@yamadatakaya) 2019年8月29日
彼女は不機嫌そうに言った。
「見ればわかるさ。眠ければ、寝ればいいと思うよ。きみのお気に入りの枕だって、熱くなった足を冷やす保冷剤だってある」
そう返すぼくに、あなたはまるでわかっていない、と言わんばかりの悲しそうな目をして繰り返した。
「眠いの」
#村上春樹で語る育児
深夜2時、僕はひどく腹を立てていた。
— ぴろしゅか (@_piroska_) 2019年8月28日
言葉にならない言葉で捲し立てる。
「どうしたの…?」
懇願するような、或いは全てを諦めたような顔をして、彼女は僕を抱きしめた。
違う。結局のところ彼女は何もわかっちゃいなかった。
縦だ。横ではない。ーー縦抱っこだ。
#村上春樹で語る育児