みんな大好き、担々麺(タンタンメン)と感じるのは、「おためし新商品ナビ」の記事の中でも非常に人気が高いから。ところがかつて食べ比べした時は2016年のこと。幾ら何でも日本の担々麺シーンも大きく変わったので、ここら辺で再びベストを決めなおしてみたい。
様々な進化を遂げたカップ担々麺の世界。ここで再び原点に立ち返って王道坦々味の名品を5種、セレクトしてみた
担々麺は元々は中国四川省発祥の、辛みを利かせた挽肉やザーサイ、チンゲン菜などをのせた麺料理だが、当初は往来で天秤で担いで販売されていたことから、汁なし担々麺が主流だったという。
そんな担々麺の歴史は、1958年に来日した料理人・陳健民が東京に開いた「四川飯店」が発祥と言われている。日本人向けにラーメン状のスープ料理にアレンジしたのが日本に次第に広まっていき、1980年代頃には一般的な中国料理店でもキラーコンテンツとしてその名を広めていった。
なので日本での担々麺にはこれといったルールはない。あえていうなら、挽肉やザーサイ、チンゲン菜などをラー油に絡めた具材としてのせて、ラーメンスープに芝麻醤(中国の練りゴマ調味料)で濃厚なゴマの旨味でしあげたあたりが共通している程度。
そこで今回はなるべく本来の担々麺の王道の味わいを持つカップ麺を5品ほどセレクトしてみた。
第5位 東洋水産『マルちゃん正麺 カップ うま辛担担麺』
「正麺」は調理中に茹でる工程を入れて生麺感覚を出すことに成功し、インスタント袋麺として一世を風靡したが、カップ麺の方はさすがに茹でることはできないので“生麺茹でてもうまいまま製法”ということになっている。ただそのノンフライ麺によるツルツルさはやはり出色の出来であり、生麺感覚は確かに素晴らしい。
そんな正麺の担々麺メニューは、辛口を主体にした「マルちゃん正麺 カップ うま辛辛辛担担麺 STRONG」という製品も同時発売で出たが、ここではあえて『マルちゃん正麺 カップ うま辛担担麺』という王道の方を選んだ。
スープは味噌ベースで、ごまの濃厚さも結構ある。ラー油オレンジが鮮やかにピリ辛感を運んでくるが、程よい辛味だ。かやくは味付挽肉、チンゲン菜、いりごまと王道ラインナップ。
粗挽きトウガラシを含んでいるスープは、軽くホットな印象。「豚の旨味」がパッケージに書いてあるのが、今回のリニューアルでの変更点だが、旨味というよりもなぜかスープを飲んだ後に舌に甘さが残るのが不思議。芝麻醤(中華の練りごま調味料)の旨味と花椒(ホアジャオ)のシビ辛に甘みという取り合わせは謎だ。
もちろん美味しい担々麺として成立はしているのだが、正麺らしさが逆にアダとなり、スープの絡まりが弱くなってしまっているのが惜しい。
マルちゃん正麺 カップ うま辛担担麺 | 商品情報 - 東洋水産株式会社
第4位 明星食品『明星 中華三昧タテ型 四川飯店 担々麺』
東京・赤坂の名店『四川飯店』(オーナー・陳建一)の味を再現ということで、最も中国生まれの担々麺の味に近いはずなのがこれ。
スチームノンフライ製法の麺は油揚げ麺ほどこってりさせずに、ノンフライ麺のようなスープを弾く勢いのツルツル感ではない絶妙な麺の味わい。サイズ感はミニだけれど、かなり店の生麺に近づいていると思う。
スープは花椒の鮮烈さと程よい辛味で、芝麻醤ならではのゴマの奥深い味わいをしっかりと出している。かやくは味付豚肉・鶏肉、チンゲン菜。初めはカップ麺舌が出来上がっている人だと最初は薄く感じるかもしれないが、中盤からどんどん美味しくなっていくのでご心配なく。
非常に上品にまとめられた逸品だと思うが、あと一つのインパクトが欲しかった。
第3位 日清食品/セブンプレミアム『鳴龍 担担麺』
「ミシュランガイド東京2017」で一つ星を獲得した東京・大塚の名店「鳴龍」の独創的な担々麺を再現したのが、『鳴龍 担担麺』。もはや醤油ベースのスープを豚と昆布とオイスターで仕上げているところから異端なムードが満点。
もちろん担々麺なので、練りゴマとラー油はしっかり入っているが、そこにさらに黒酢とリンゴ酢を合わせるというのがクセ。ノンフライストレート麺を使用して、かやくはそぼろ肉とネギ。しかし粉末スープを開けた時点で、花椒はわかるが、八角(スターアニス)の香りも強く感じるので、仕上がったその香りは担々麺として大方の日本人が予測するものとはかなり違う。ある意味中国エスニックな雰囲気。ここら辺は好き嫌いが分かれるかも。
創作系担々麺としては、後味を酢でスッキリさせる手法も上手ではある。普通の坦々麺を食べ飽きた人の為の上級品という趣きだ。
鳴龍 担担麺 149g | セブンプレミアム公式 セブンプレミアム向上委員会
第2位 エースコック『タテ型 飲み干す一杯 担担麺』
タテ型カップ麺なので手軽さがメインで味の方はほどほどかなと考えていたが、良い意味で裏切られた。しょうゆや砂糖を練りこんだ味付き油揚げめんを使用して、スープはポークベースで味噌と醤油を加え、豆板醤やお約束の練りごまを加えて仕上げた複雑怪奇な原材料。
一体どうなることやらと思って食べて、感動。ラー油の辛さも程よくホットだが、かやくに鶏&豚味付け肉そぼろ、チンゲン菜、ねぎ、唐辛子が含まれているが、白ごまとスープのゴマの旨味が合体すると、実に濃厚なゴマ味のビッグウエンズデーに飲み込まれる。
タテ型で手軽な感覚はそのままに、まさに基本の担々麺の味をしっかりと再現。思っても見ないダークホースと考えていたが、この美味しさには感動した。記者は今回の”汁あり”ではこれが一番気に入った。
タテ型 飲み干す一杯 担担麺|商品情報|エースコック株式会社
第1位 ヤマダイ/ニュータッチ『THE・汁なし担担麺』
中国で往来で売られていたというそもそもの基本形とされている「汁なし担々麺」。今回の担々麺特集でもやはり触れざるを得ない。その中でも独自のノンフライ製法で人気ののもちもち食感の極太「凄麺」を使用しているのが『THE・汁なし担担麺』だ。
日本ではラー油をメインキャストにまつり上げた千葉県の「勝浦式タンタンメン」や、最後にご飯を入れて締める「広島風汁なし担々麺」など、独自の進化を遂げているものもあるが、この『THE・汁なし担担麺』は中国伝来のものに近い王道汁なし担々麺タイプ。
タレはポークをベースにした旨味の濃厚なタイプ。そこにかやくとして味付け肉そぼろ、ごま、チンゲン菜、唐辛子、花椒が加わるのだが、その配分が絶妙。うどんやパスタに近いみっちりした食感の麺にゴマ味が濃厚に絡むと、怒涛の旨味の嵐。いわゆる糖質制限などのダイエット的にはかなり罪深いほぼほぼ麺という構成だが、それらを無視してでも一気に食べたくなる悪魔的な魅力がある。汁なしの王道として、担々麺ファンなら、一度は味わっておきたい名品である。